シンプルに考えることがいかに大切なのか〜『Think Simple ―アップルを生みだす熱狂的哲学』より

スポンサーリンク

『Think Simple ―アップルを生みだす熱狂的哲学』は、ジョブズ時代のAppleで「Think Different」などのキャンペーンに携わったケン・シーガル氏の著書です。本の中で、シーガルさんはシンプルさがいかに大切かを何度も繰り返し説いています。

ジョブズ時代のAppleが同社の黄金期であったことに異論を挟む人はいないでしょう。特に、一度追放されたジョブズがCEOに復帰してからは、次々と革新的な製品を送り出し、類まれなクリエイティビティを発揮していました。

では、そのクリエイティビティの源泉はどこにあったのか。それこそが著者の説く「シンプル思考」なのです。

複雑さを嫌ったジョブズ

スティーブ・ジョブズは複雑さを嫌いました。たとえば、社内のとあるプロジェクトで製品のパッケージ案を考えていたとき、プロジェクトのリーダーはふたつの案を作らせていましたが、ジョブズはそれを「無能な人間のすること」と捉えました。

「ひとつの製品に箱はひとつだろう」

つまり、箱の第2案を作ってはいけなかったのです。

このような調子で、ジョブズはほかのプロジェクトにおいても何度となく「シンプルの鞭」を振るったといいます。

またある一方、過去に著者が関わった別のテクノロジー企業(こちらも大企業)では、すべての会議室に額縁入りの社訓が飾られていました。社訓の見出しは「成功する会議の実践法」。そこには箇条書きで次のようなことが書かれていました。

「会議の最初に議題を述べること」 「出席者全員が議論に加わること」 「次のステップのために合意で会議を終えること」

──一見するとどれももっともらしいですが、著者に言わせれば、これらの社訓が本当に言っているのは「大企業へようこそ! これに従えば、あなたも適合できる」ということなのです。

これがジョブズなら、上記のような社訓は嬉々として取り去り、そのかわりにインスピレーションを与えてくれるようなアートを飾るだろう……と著者は語ります。

箇条書きで書かれた社訓とインスピレーションを与えてくれるようなアート。どちらがよりシンプルなのかは、言うまでもないでしょう。

人間は複雑な方向へ流されてしまいがち

人間はそもそもが複雑な生き物です。そのため、つい複雑な方向へ流されてしまいがちです。「複雑なやり方のほうがどこか利口に見える」と信じている人も少なくありません。

特にビジネスの場では、曖昧で言い方をする人間はとても多い。そういう言い方が誠実さなのだと考えている人さえいます。

しかし、そうした曖昧さが複雑さを招いているのです。複雑さは、時間の無駄につながります。真剣に競争している企業なら、時間を無駄にしている暇はないはずです。

シンプルさを心がけましょう。たとえば、プロジェクトに参加させるメンバーを決めるときも、多くの人間を参加させるのではなく、少人数で進めていくことを推奨します。そもそも、スタート時のメンバー編成がいい加減だから、もっと多くの人を参加させたほうがいい、と思ってしまうのです。最初から適切なメンバーを選んでいれば、小さなグループのほうが自身を持って運営できるはずです。

肝心なのはクオリティ

全編を通して「シンプル」の大切さを説いている著者ですが、ひとつ重要な事実を指摘しています。

その事実とは、「シンプルな考えが常に優れたアイデアとは限らない」ということです。

肝心なのはクオリティであって、シンプルさではない。シンプルさにこだわるあまり、クオリティの低下を招いてしまっては本末転倒になる。そのことを忘れないようにしましょう。

このような注意点はありますが、シンプル思考が多くの場合において大切なのは間違いありません。世の中は複雑さで溢れかえっており、その中で個人の創造性は殺されてしまいがちです。「もっとシンプルにならないか?」と考えることは、無駄をなくし、問題の本質を捉え、創造性を発揮させることを可能にします。それこそがシンプル思考の力なのです。

Think Simple アップルを生みだす熱狂的哲学

Think Simple アップルを生みだす熱狂的哲学