美少年によって救われた男〜映画『ベニスに死す』

映画『ベニスに死す』を見た。ネットでレンタルした。美しいと評判の映画で、本当に美しかった。

人生に疲れた作曲家のおっちゃんが、療養に訪れたベニスの地で、とんでもない美少年に心を奪われてしまうというストーリー。

美少年が嘘偽りなく美少年だった。そのあまりの美しさに、おっちゃんは美少年に話しかけることさえできず、ただただストーキングするしかない。おっちゃんは乙女だった。

しかし、裏ではベニスの地に疫病が蔓延しており、ストーリーの後半になると街が完全に荒廃している。美少年の美しさを描く一方で、街の荒廃を描写する対比がグッド。

ストーリーの序盤では、おっちゃんは「美は努力によって作れる」という持論の持ち主だったが、美少年という自然が生み出した圧倒的な美を目撃したことで、その持論はあっけなく打ち砕かれる。

老いにさしかかっていることもあり、おっちゃんは美少年と比較して自分が惨めに思えてくる。話しかけられないのはそれが原因だが、一方で、美少年の美しさにインスピレーションを得たことで、おっちゃんの作曲活動は捗っていく。

ストーリーの後半、おっちゃんはついに疫病のことを知るのだが、それでもベニスの地に残ることを決断する。そこに美少年がいるからだ。

そして、おっちゃんも疫病にかかってしまう。

ラスト、太陽の輝きに照らされる美少年の姿を、虫の息で追いかけるように手を伸ばしながら、おっちゃんは死んでしまう。

これは悲劇か?

いや、違う。

おっちゃんの人生は、ベニスに訪れた時点で絶望だった。しかし、美少年に出会ったことで、人生に再び光が差し込んだのだ。もはや美少年なくして生きる意味なし。だからおっちゃんはベニスに残り、美少年に魅入られながら死んだのだろう。結果的に死んでしまったものの、おっちゃんの心は美少年の存在によって救われたのだ。

ベニスに死す (字幕版)

ベニスに死す (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video