谷崎潤一郎『文章読本』読書メモ

谷崎潤一郎の『文章読本』から気になった部分をピックアップ。ちなみにKindleで読んだのだが、単品版はなかったので全集に収録されているものを読んだ。

言語とは?

  • 言語は思想を伝達すると同時に、思想にひとつの形態をつける働きを持つ。
  • 言語は不自由なもの。思想、感情、心など、なんでも表現できると思ったら大間違い。言語の限界を知れ。

文章の技巧

  • 簡単な言葉で、明瞭にものを描き出す。それは大変な技巧なのだ。
  • 言葉というものが不完全である以上、私たちは読者の眼と耳とに訴えるあらゆる要素を利用して、表現の不足を補って差し支えない。
  • 読者に「わからせるように」書くためには、「記憶させるように」書くことが必要だ。

日本語の長所

  • 日本語と英語の違いは、そのまま国民性にも反映されている。つまり、日本人はお喋りではなく、日本語はお喋りに向いていない言語だ。そのかわり、日本語は少ない言葉で多くの意味を内包できるようにできている。日本語の長所と短所を意識せよ。
  • 不必要に形容詞や副詞を使うな。それは日本語の長所を殺す行為だ。

名文とは?

  • 文法的に正確なのが、必ずしも名文ではない。だから文法には囚われるな。
  • 名文とは「長く記憶に留まるような深い印象を与えるもの」「何度も繰り返して読めば読むほど味が出るもの」だ。
  • 名文の感覚を養うためには「できるだけ多くのものを、繰り返して読むこと」「実際に自分で作ってみること」の2つを行っていく。

言葉の音楽性

  • 人間が言葉を使うと同時に、言葉も人間を使うことがある。
  • 言葉というのはひとつの音楽だが、漢字という便利なものがあるせいで、しばしば言葉が持つ音楽性が忘れ去られる。漢字の意味に囚われるな。
  • 文章道において、最も人に教え難いのが「文章の調子」だ。文章の調子は天性によるところが多い。調子とは、その人の精神の流動であり、血管のリズムだと言える。

その他

  • 日本の文章は、読み方がまちまちになることは如何にしても防ぎ切れない。
  • 現代の文章の書き方は、あまりに読者に親切すぎる。もう少し不親切に書いて、あとを読者の理解力に一任したほうが効果がある。
  • 「~のである」口調は政治家の演説から出たものだけに、四角張った、多少取り繕ったような、ぎこちない感じを起こさせる。
  • 嘘を本当らしく感じさせるには、なるべく簡単に書くのにかぎる。くどく説明すればするほど嘘が一層嘘らしくなる。

なお、原書はひと昔前の文章で書かれているため、今の人からすると難解な漢字が使われていたりする。そのため、引用部分はすべて自分なりにアレンジしていることを承知しておいてほしい。

簡単に感想を述べると、名文の定義がはっきりしている点がいいなと思った。

文章読本 (中公文庫)

文章読本 (中公文庫)

  • 作者:谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1996/02/18
  • メディア: 文庫