『荒木飛呂彦の漫画術』読書メモ

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『ジョジョの奇妙な冒険』で超有名な荒木飛呂彦先生による漫画講座。ジョジョ制作の秘密が惜しげもなく明かされている。創作者だけではなく、ファン・アイテムとしても必読だろう。

まず、キャラクターの身辺調査表を作っている、というのが印象に残った。ジョジョはすでに100巻を超えている長大なシリーズだが、まったくキャラクターが被らないのがすごいと思っていた。その秘密は、やはり裏でこつこつと地道な作業を行っていたのが理由だったのだ。

荒木先生は、約60の項目を設定して、キャラクターを肉付けしているという。それを40年以上も続けているのだからすごい。しかし、これを行うことでキャラクターがはっきりと絵になり、誰々と誰々が被っているということもなくなる。

ストーリーでは、起承転結を意識しているという。これだけならほかの創作者と変わらないが、「起承転結は身体で覚えろ」という点が独特だ。普段から日常生活のなかでも起承転結を見つける──たとえば、コース料理とか、スポーツの試合とか──ことを訓練して、それを創作に活かす。理論よりも実践。それが起承転結をマスターする術だ。

「プラスへ向かっていけ」というアドバイスも重要だ。主人公はマイナスからプラスへ向かっていく。これがエンターテイメントの基本だ。ジョジョ第1部のジョナサンがまさにそう。ちなみに悪役のディオも、マイナスからプラスへ上がっていくパターン。

途中でマイナスに下がってしまうのは駄目なパターン。「壁にぶつかる」とかそういうの。たとえば、スーパーヒーローが壁にぶつかってヒーローをやめてしまう、というパターンは駄目。読者からすれば、どうせ最後はヒーローに復帰するのはわかりきっているのだから、そんな展開を見せられてもストレスが溜まるだけ。

ちなみに、ジョジョ7部ではジョニィは最後の戦いに負けてしまうが、これは「勝負に負けて人生に勝った」という展開なので作者的にはOKなのだろう。

ストーリー上、やってはいけないタブーをいくつか。

  • 作者がコマの外で突っ込みを入れる。興ざめするから駄目。
  • 偶然の一致による物事の解決。
  • 主人公が間抜け。
  • 夢オチ。

逆に、ストーリー上やったほうがいいのは、「冒頭はキャラクター紹介から始める」ということ。そうしないと読者は混乱する。

これは最近の『ジョジョリオン』の展開で、オージローが再登場する話のとき、まずはオージローのキャラクター紹介描写から行っていたことからもよくわかる。

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ほかに荒木先生が心がけているのは、絵をしっかり描くこと。絵を描くこと自体を楽しむ。漫画のコマ1つ1つが絵として完成されていることを重視しているという。

荒木先生はもともと画力が高い方だが、ウルトラジャンプに移籍したあたりから絵の迫力がさらに上がってきた。実際、絵を眺めているだけでもジョジョは面白い。

漫画というとストーリーが重視されがちだが、「絵をしっかり描く」ということができて初めてストーリーが生きてくるのだな、とジョジョを読んでいて感じる。

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

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