ポジティブ人間に騙されるな〜Netflix『FYRE/夢に終わった史上最高のパーティー』感想

『FYRE/夢に終わった史上最高のパーティー』というドキュメンタリーを見た。大失敗に終わった「ファイア・フェス」の詳細を関係者へのインタビューから追っていく。「ファイア・フェス」とは、無人島にインフルエンサーを集めて高級なお祭りをやろうぜ、という企画だ。

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最高責任者のビリー氏はまさに「ポジティブな起業家」そのもので、この手の人にありがちな欠点もちゃんと備わっている。ビリー氏は、そのありあまる過剰なポジティブさから、冷静に忠告してくれるビジネスパートナーをクビにしてしまうのである。

たとえば、「無人島でフェスをやる」という企画に対してパートナーは、「トイレどうするの?」「電気どうするの?」「高級寿司とかインド料理ってどうやって調達するの?」「高級な宿場ってどう用意するの?」といった至極まっとうな懸念を表明するのだが、ビリー氏は「前向きじゃないやつはいらん」とばかりにクビにする。そうしたことが続いた結果、ぐだぐだなままフェス当日を迎えることになり、案の定、大失敗に終わってしまう。

ライブステージでの音楽の演奏はなく、簡素なサンドイッチに簡素なテントがあるだけ。参加者が次々と不満の声をあげるが、スタッフにもどうすることもできない。そして夜になり、参加者は暴徒と化す。ネット上のウォッチャーたちはその様子を「セレブたちによる『蝿の王』」と呼んだという……。

当然のごとくフェスは中止となり、参加者たちは予定よりも早く帰国することとなった。

その後、フェス自体が誇大広告だっただけでなく、給与の未払いや投資家にまで嘘をついていたことが判明し、責任者のビリー氏は詐欺罪で捕まってしまう。

ところが、話はここで終わらない。

その後、ビリー氏は保釈金を払って自宅謹慎していたのだが、そこでもまたチケット詐欺に手を出してしまう。

なぜまた詐欺に手を出してしまうのか。常人には理解できない行動だ。

一応断っておくと、ビリー氏は元から詐欺師だったわけではない。プロの詐欺師なら、「ファイア・フェス」のような大規模なイベントを行えば逃げられないであろうことは承知しているはず。

ビリー氏は悪意があって詐欺を働いているのではなく、とにかく自分を大きく見せたいとか、自己顕示欲の暴走によって詐欺を働いているのだと思う。つまり、心の病気なのだ。

結局、チケット詐欺の罪でビリー氏は再逮捕され、6年間の服役が課せられた。しかし、彼に必要なのは牢屋ではなく、治療施設だろう。

出所しても心の病が治っていなければ、きっとまた詐欺に手を出すことであろう。そんなことを死ぬまで繰り返すのだろうか。こうなってくると被害者や関係者だけでなく、ビリー氏本人もかわいそうだ。

ドキュメンタリーのオチとして、「このフェスで行われたことは、インスタ映えを意識するあまり嘘をつくようなことの延長線上にある」「インスタ詐欺の極地」というまとめがよかった。

他人の目ばかり気にして嘘の自分を演出するような人は、誰でも第2のビリー氏になり得るということだ。

たとえば、食べもしないパフェを注文して写真だけ撮るとか、あるいは、飛行機に乗って写真だけ撮り、旅行したように見せかけるとか(これは実際に番組内であった)。

僕にはそういう嗜好はない。

というか、なぜそこまでするのかわからない。

いくら他人を欺いたところで、自分がどれほど惨めなのかは自分自身がよくわかっているだろうに……(まあ、僕は逆に自分自身の評価を気にしすぎなのかもしれないが)。

そういえば少し前、キンコン西野が行った中身のないスピーチが話題になっていた。

僕はこれを見て、キンコン西野とビリー氏はそっくりだと思った。こういう中身がない、「なんだかいいことを言っている感じ」の言葉に流されると、このフェスの犠牲者のようになるのだろう。

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