『NO HARD WORK!』読書メモ

広告

巷で話題の『NO HARD WORK!』という本を読んだ。気になった部分をメモしつつ感想を述べてみたい。

まず、著者のジェイソン・フリードについて。彼はベースキャンプ社のCEOで、本書は基本的に、彼が自社で行っている取り組みをもとに書かれている。提供している製品は社名と同じ「ベースキャンプ」。日本では馴染みが薄いが、英語圏ではプロジェクト管理ツールとして一定の知名度があるという。公式サイトは以下。

basecamp.com

カーム・カンパニー(穏やかな会社)という概念

ジェイソン氏は、自社がカーム・カンパニー(穏やかな会社)になることを目指してきたという。

では、ここでいう「カーム」とはなんだろうか。それは以下の事柄である。

  • カームとは、人々の時間と集中力を守ること。
  • カームとは、1週間あたりの労働時間を約40時間に収めること。
  • カームとは、現実的な見込みを立てること。
  • カームとは、充分な休日があること。
  • カームは、比較的小さい。
  • カームは、くっきり見える境界線。
  • カームは、会議を最後の手段とする。
  • カームは、まずはメールなどの受動的なコミュニケーション・ツールで、その次にリアルタイムでコミュニケーションをとること。
  • カームとは、みんなが独立していて、相互依存が少ないこと。
  • カームとは、息の長い持続可能な営み。
  • カームは、採算性が高い。

まとめると、「無理をせず、継続的に働ける環境」を維持することだと言える。

長期計画は立てない

ベースキャンプ社では、ひとつのプロジェクトに6週間かけて打ち込み、その後の2週間は気ままに仕事をしてガス抜きをする。1年先とか10年先の長期計画はない。6週間に収まりきらない計画は「あとで検討」となる。なぜか? 長期計画を立ててしまうと、最初のプランに縛られて柔軟性が失われるからだ。

また、目標も立てないようにしている。目標を立てると、それを達成することだけを考えるようになり、結果として無理が増えるからだ。これは従業員だけでなく、消費者にも不便を強いることになる。たとえば、携帯電話の解約手続きが複雑なのは、電話会社の「目標」のせいだ。

生産性より効率

「カーム・カンパニー」を実現するため、ベースキャンプ社が最も重視しているのが効率である。効率化が果たされればそれだけ時間的にも体力的にも余裕ができるからだ。

ここで重要なのは、「生産性よりも効率を重視する」という点である。生産性を上位に置いてしまうと、いくら効率化が果たされても、スキマ時間をなにか別の作業で埋めるようになってしまう。それは間違っている。効率化とは、いかに作業を少なくできるか、いかに省略できるかに焦点を当てることなのだ。

そしてベースキャンプ社では、効率化のため、以下の事柄を実践している。

  • 定例会議は時間の無駄だからやらない。そのかわり、自社製品のベースキャンプに最新情報を書き込むようにしている。従業員は、各自時間が空いたときにそれを読めばいい。
  • ある分野に詳しい社員が質問攻めにならないように、「開講時間」という制度を設けている。従業員は各自、自分だけの「開講時間」(木曜日の1時間だけとか)を設定でき、その時間だけ周りからの質問を受け付ける。
  • シェアできるカレンダーは禁止。誰かに勝手に予定を入れられてしまうから。他人と予定を合わせたいときは直接交渉すること。
  • オープン・オフィスは気が散る。かといって、従業員ひとりひとりに個室を割り当てるのも難しい。そこで、職場では「図書館のように静かにすべし」というルールを設ける。
  • 会議室でアイデアを発表するようなことはしない。高確率で邪魔者が入ってくるから。ベースキャンプ社では、「ベースキャンプ」に文章をアップすることで間接的に発表する。
  • 締切は絶対に固定。途中で日程を変えたりしない。作業量に関しても、減らすことは許されるが、増やすのは禁止。

人材の確保と同一労働・同一賃金

ベースキャンプ社では、無闇に従業員を増やすようなことはしない。採用自体に慎重なのだ。もしうかつに採用した人が会社に馴染めず、大した成果も出せなければ、クビにするしかない。それはクビにされるほうはもちろん、クビを決定するほうにとってもストレスだ。だから慎重になる。

そこでベースキャンプ社では、次のような採用方法を行っている。

まず応募者のなかから、「一緒に働きたいと思えるか」「チームに新しい風を吹き込んでくれるか」を念頭に候補者をしぼっていく。次に、最終候補者をひとりずつ、1週間だけ雇う。そこで実際の仕事ぶりを見て、雇うかどうかを決定する。

重要な点としては、これは即戦力テストではないということだ。著者は即戦力人材は幻想だと述べている。1週間だけ雇うのは、あくまでベースキャンプ社でやっていけるかどうかを見るのが目的だ。

こうした人材確保の姿勢から見えてくるのは、「即戦力は期待しないが、会社に合わないような人材は取らない」という意志だ。日本の新卒一括採用は「即戦力は期待しない」という点ではベースキャンプ社と同じだが、それ以外は異なる。実際の仕事ぶりを確認せずに採用してしまうため、明らかに会社に合わない人材まで取ってしまう。

ベースキャンプ社では「実際の仕事ぶり」がなによりも重要視される。それは給与体系にも現れている。

同社の給与体系は「同一労働・同一賃金」。役職と仕事内容によってほぼ自動的に賃金が決まる。けっして年功序列ではない。そもそも仕事で評価しようとすれば、必ず「同一労働・同一賃金」になる。

では、労働ごとの賃金はどうやって決めるのか。それは職種の市場相場を調査することによって決められる。つまり、ある職種の市場相場が高まればそれに応じて賃金も上がるし、逆に価値が低くなれば賃金も下がる。このシステムのメリットは、個々の従業員が賃上げ交渉する手間を省けることだ。

ベースキャンプ社の取り組みから見えてくるもの

以上の内容をまとめると、会社を穏やかにするためのコツは次のようになる。

  • 効率化を最優先すること。
  • 効率化は、従業員の負担を減らすことにフォーカスして行うこと。
  • 会社は、個々の従業員の集中力を高めるための仕組みを用意すること。
  • 長期計画を立てないこと。
  • 無駄に従業員を増やさないこと。
  • 従業員の仕事ぶりを評価すること。

さて、こうしたベースキャンプ社の取り組みから見えてくるものはなんだろう。それはつまり、人間というのは、基本的にひとりで仕事をしたほうが集中力が高まる、ということだ。

なにを当たり前なことをと思われるかもしれないが、案外、ここのところがわかっていない会社は多いのではないかと思う。無駄に会議を増やしたり、あるいはオープン・オフィスを信奉したりするのも、結局は「周りと一緒に仕事をしたほうが生産性が高まる」という勘違いが根本にあるのでは。

ウェブがなかった時代ならともかく、現在は人と人が直接会わなければいけない理由は減ってきている。もうそろそろ勘違いを矯正してもいい頃だろう。

NO HARD WORK!: 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方

NO HARD WORK!: 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方

  • 作者: ジェイソンフリード,デイヴィッドハイネマイヤーハンソン,Jason Fried,David Heinemeier Hansson,久保美代子
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/01/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る