現実に存在する運命〜映画『15時17分、パリ行き』感想

クリント・イーストウッド監督の映画、『15時17分、パリ行き』を見た。この映画は現実に起こったテロ事件を題材にしており、事件を防いだ3人の重要人物を本人たちが演じている点が特徴だ。イーストウッドがこの映画で描いたもの、それは現実に存在する運命だった。

この映画を見る前には、「タリス銃乱射事件」の概要を頭に入れておくといいだろう。この事件が本作で描かれるものだ。

ニュースで見た程度では、「たまたま同じ車両に軍人が乗っていて助かった」としか思わない。もちろん、これはこれですごい偶然ではあるのだが、映画を見れば、もっと多くの偶然があの場に集っていたことがわかる。

映画は、スペンサー・ストーンというアメリカ人の視点で描かれていく。ともにテロを阻止したアレク・スカラトス、アンソニー・サドラーとは幼馴染であり、彼らは子供の頃から問題児だった。学校の勉強に情熱が持てず、かといって、ほかにやりたいことがあるわけでもない。そして、教師の言うことはまったく聞かなかった。そのため、彼らの親はたびたび学校に呼び出されていた。

青年になったストーンは、空軍のパラシュート隊員を志すようになる。子供の頃とは打って変わり、不断の努力によって適性試験をクリアしていくストーンだったが、最後の最後で視力検査に引っかかってしまう。これが原因で、彼は夢を諦めざるを得なくなる。

その後、ストーンは軍の救命部隊に入る。彼がやりたかったこととはまったく違うのだが、そこでの訓練が、後のテロ事件の際に役立つこととなる。

テロ事件は負傷者こそ出たものの、奇跡的に死亡者はゼロという結果で終わった。それは単に、軍人が犯人と同じ車両に乗り合わせていたというだけでなく、ストーンが救命部隊の訓練で学んだことがあったからこそなのである。もし、ストーンが当初の希望どおりパラシュート隊員になっていたら、結果はもっと悲惨なことになっていたかもしれない。もちろん、ストーンだけでなく、ほかのふたりもいなければ、犯人を取り押さえられていたかどうかもわからない。

つまり、この事件の解決には、本当に奇跡的な偶然がいくつも積み重なっていたということだ。いや、ここまでくればもはや「偶然」では片付けられない。運命と呼ぶほかない。

「運命」というと、いささかフィクションめいて聞こえるが、それは確かに現実世界に存在するものなのだ。それを伝えるために、イーストウッドはこの事件を映画化し、当事者を本人役で出演させたのだろう。現実に存在する運命〜映画『15時17分、パリ行き』感想

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