終わりのないのが終わり〜『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』感想

Image from Gyazo

『ブラック・ミラー』シリーズの最新作、『バンダースナッチ』を見た。ダークな作風で人気を博している本シリーズだが、最新作では初のインタラクティブ・コンテンツに挑戦した。

インタラクティブ・コンテンツというのは、要する選択肢があるストーリーのこと。本作は実写ドラマだが、ストーリーの最中にたびたび選択肢が表示される。視聴者は、2つの選択肢の中からいずれかを選び、それによって後の展開が変化していく。簡単に言えば実写版アドベンチャーゲームだ。

本作でまず目を引くのは、選択肢が展開される場面と、その後の展開の切り替わりが非常にスムーズだという点だ。アドベンチャーゲームの場合、いったん作中の時間が停止して、そのあいだにプレイヤーが選択するというシステムがほとんどだが、『バンダースナッチ』の場合は10秒ほどのアクティブタイムの中で選ばなければならない。もし、視聴者がどちらも選ばなかった場合は、自動的に一方が選択される。このシステムは一定の緊張感を生んでおり、加えて、ストーリーの流れをスムーズにする効果がある。

舞台は1980年代の前半。主人公のステファン・バトラーはプログラマーだ。まだファミコンが登場して間もないころだといえば、当時のコンピュータのレベルがだいたい想像できるだろう。そんな時代に、ステファンは独力でゲームを作り、とある会社に売り込もうとしている。

ステファンが作ろうとしているゲームは「バンダースナッチ」。このゲーム名がタイトルにもなっている。そしてゲーム自体も、プレイヤーが選択肢を選び、それによって後の展開が変わるというアドベンチャーゲームだ。つまり、選択肢が表示されるドラマで、主人公が選択肢のあるゲームを作ろうとしているというメタ構造になっている。

また、ステファンはメンタル的な問題を抱えており、カウンセリングに通っている。この設定は、後々ストーリー内で現実と虚構の差が曖昧になっていくことの伏線になっている。ちなみに選択肢によっては、カウンセラーとバトルを繰り広げることもできるが、それは自身の目で確かめてほしい。

ストーリーは1時間ほどで終了する。もちろん、ステファンの運命は視聴者の選択によって変わっていく。そして多くのアドベンチャーゲームと同様、別の選択をした結果が気になって何度も繰り返してしまう。

ところが、何度かやっているうちに、どうもこれはハッピーエンドがなさそうだぞ、ということがわかってきた。ゲームを完成させたにせよ、未完成で終わったにせよ、どう転んでもステファンは不幸な最後を迎えてしまう。視聴者が満足の行くエンディングというのが存在しないのだ。

そこまで気づいたところで、本作の視聴を終了した。

つまり、これはそういう作品なのだ。

「視聴者はステファンをハッピーにしたくて、何度も物語を繰り返す」。その構造こそが本作のテーマなのだ。

結局、なにが間違いで、なにが正解なのか。視聴者がそうした真実に到達することはけっしてない。あの「ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム」のように……。

「終わりのないのが終わり」。それを視聴者に体験させるドラマとして表現したのが、本作、『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』なのである。

youtu.be