2016年に行われたアメリカ大統領選挙は、大接戦の末、共和党のドナルド・トランプ候補の勝利に終わった。
トランプ氏は、その歯に衣着せぬ発言からたびたび問題になり、政策以前に人格が嫌いという人も多い(もっとも、嫌われているのはヒラリー候補も同じだったが)。
さて、そんなトランプ氏だが、彼の実像を知っている人は意外と少ないのではないか。過激な発言を繰り返すその裏で、実際には何を考えているのだろう。
今回は、新たに大統領になったドナルド・トランプその人を深く知るための書籍を7つ、Amazonから探してみた。トランプ氏本人が書いたもの、トランプ氏に批判的なもの、逆に肯定的なものと、なるべく公平なラインナップを心がけたつもりだ。
トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ
ドナルド・トランプを知るうえで自伝は外せないと思ったので入れたが、Amazonでは中古品しかない。しかも、文庫なのに値段が1600円。出版社はちくま文庫のようだけど、大統領になったことだし、再販してくれないかなぁ……。
トランプ思考
こちらも本人による書籍。ウェブ上で公開した記事を中心にまとめたエッセイ集らしい。Amazonレビューの「my God Trump !」と「世界の英雄ドナルドトランプ」で思わず笑った。
ドナルド・トランプ 劇画化するアメリカと世界の悪夢
トランプ氏に批判的な人による書物。現在のトランプ現象は「アメリカの心の闇」らしい。
ドナルド・トランプ 黒の説得術
こちらはトランプ氏に好意的な著者によるものであり、氏の「話術」に焦点を当てている。
Amazonのレビューから一部を抜粋すると、
多くの日本国民は、トランプ氏に対して、どんなイメージを抱いているだろう?暴言王、人種差別主義者、ポピュリスト・・・?
果たして、それは彼の素顔なのだろうか、米国の有権者も日本人と同じように見ているのだろうか?
筆者は、違うと断言する。
彼は話術の達人であり、一流のビジネスマンである。そして、多くの人々が忘れかけている自助、自立、勤勉の精神を呼び起こした。だから、共和党予備選挙で史上最多得票により大統領候補に選出された。
トランプ氏が極めて少ない資金で選挙を戦っている「最もクリーン」な候補であることもマスコミは報道しない。
だそう。
熱狂の王 ドナルド・トランプ
こちらもトランプ批判本。著者はアメリカ人で、ピューリッツァー賞を受賞したこともあるジャーナリストらしい。本書の執筆には3年をかけたとか。
先に紹介した批判本にも共通しているが、トランプ現象には「現代のアメリカの問題」が内包されていると主張している。
トランプは、その交渉術や財力はもちろん、人々のイメージや不安、恐怖、メディアパワーなど、あらゆる要素、そしてアメリカの抱えるあらゆるグレーな部分を、巧妙に利用しながら、良くも悪くも注目を集め続けてきました。
この本で、トランプの生きてきた道筋、ビジネス手腕や政治的な駆け引き、メディア戦略をたどっていくこと――。それはつまり、格差や貧困、ポピュリズム、いまだに残る人種差別、抜け穴の多い補助金や破産制度と、抜け穴の利用を半ば是とする商習慣、「アメリカンドリーム」と言いながら金持ち有利な各種制度など、「現代のアメリカが抱える矛盾や不安、問題点」を知ることでもあるのです。
THE TRUMP - 傷ついたアメリカ、最強の切り札
トランプ氏本人による書で、今回の大統領選(そして今後のアメリカ)に関わる、政策的な部分に関して述べられている。以下、参考までに目次を抜粋。
- 信じられない事実
- 再び勝利を
- バイアスのない政治メディア
- 移民 国境の壁は良き隣人を作る
- 私の外交政策 平和のための戦い
- 教育政策の失敗
- エネルギー問題 アツくなるのは議論だけだ
- 医療保険こそ病の元凶だ
- 経済こそが大事なのだ、愚か者め
- 「ナイスガイ」は一番になれる
- 米国人に生まれたことは幸運だ
- 武装する権利
- 米国のインフラはボロボロだ
- 幸せの価値観
- 新しいゲームが始まる
- メディアに言いたい 君らの問題は強欲と常識の欠如だ
- 機能する税金システム
- 偉大なる米国の再生
ドナルド・トランプ演説集
タイトル通り、演説集。一部の抜粋ではなく、全体を訳した完全翻訳。ドナルド・トランプを分析するうえでは避けて通れない書物だろう。
最後に
僕自身のトランプ氏に対するスタンスを説明しておくと、「支持はしないが、だからといってヒラリーがよかったと言うつもりもない」というのが正直なところ。もちろん差別発言はいけないと思うが、それはそれとして、今回の大統領選はヒラリー、トランプ両候補とも日本にとって益はなさそうだったので、「どっちでも厳しいよなぁ……」と思いながら選挙の行方を眺めていた。
さて、トランプ大統領が登場して、日本人はどうすればいいのか?
山猫日記さんというブログに、このようなことが書かれている。
米大統領が誰になり、どんな政策を展開するかは日本にとってとても重要です。しかし、日本には、日本が独自に解決すべき問題がいくらでもあります。他国の大統領の暴言を気にしている場合ではありません。日本は、難民を排斥する以前にほとんど受け入れていない国ですし、女性蔑視の発言が平気で横行する国なのですから。日本にできることは、責任ある安全保障政策を追求し、国際的な経済秩序を積極的に提案し、必要な経済改革を自らやってのけることです。当たり前のことを当たり前にやればいいのです。
まさにその通り。日本人は、まず日本の問題に向き合わなければならない。経済政策はもとより、差別問題に関しても、日本は遅れているのだから。