創業者が一線を退いたり、いくつかのサービスが終了したりと停滞気味だったEvernoteだが、ここ最近になって、2つの大きなアップデートが発表された。ようやく何かが動き出した感がある。
Android版Evernoteのカメラモードが進化
まず1つ目の大きなアップデートは、Android版のカメラモードが圧倒的に進化したことだ。
具体的に説明すると、自動モードが追加された。これは、Evernoteアプリが自動的に原稿のサイズと種類を自動検出してくれるもので、ユーザーはただスキャンしたい用紙をレンズに捉えて、シャッターを切ればいいだけになった。
同じような機能は、既に「Scannable」という単独のアプリで実現していたのだが、これはiOS専用であり、Androidユーザーは使えなかった。Evernote社は、このScannableのAndroid版を用意するかわりとして、Evernoteアプリ自体にScannableの機能を組み込んだわけだ。
また、合わせて画像の注釈機能も追加された。ノートに保存された画像に、アプリ内から好きな注釈(矢印、スタンプ、文字など)を加えられるようになった。
Googleドライブとの連携
もう1つの大きなアップデートは、Googleドライブとの連携が実装されたことだ。これは驚くべきコラボレーションであり、海外はもとより、日本のITクラスタにも激震が走った。
現在のところ連携機能はまだベータ版であり、Evernote WebとAndroid版のテスターしか使用できない。しかし、実際に試してみると、とても興味深い機能であることがわかる。
実際の使用感は、動画を見てもらったほうが早いだろう。
Evernote and Google: A Smarter Way to Work
このように、Googleドライブのドキュメント、スプレッドシート、プレゼンテーションのファイルが、クリック一発でノートに挿入できるようになった。しかも、ファイルに行われた変更は即座に反映される。そして、Evernote内で検索すると、同時にGoogleドライブのファイルも検索できるようになる。
これは互いの弱点を補強する、良コラボレーションだ。
これまで、Evernoteはリッチテキストを作成するには不向きだった。またGoogleドライブも、ファイルを整理する方法がフォルダ分けしかないという有様だった。その弱点が、今回のコラボレーションによって一気に解消されたのである。
つまり、今後はGoogleドライブで作成したファイルは、Evernoteで管理すれば良い。Evernoteはノートブックとタグの2種類で整理できるため、Googleドライブと比べて、より柔軟に管理できる。そして、わざわざアプリケーションを切り替える必要はないのだ。
これらはまだ始まりに過ぎない?
Evernoteの公式ブログに、気になることが書かれている。
今回の新しい連携は、Evernote と Google による今後のさらなる素晴らしいコラボレーションの始まりに過ぎません。
これはどういうことだろう。Googleドライブとの連携だけで終わらず、まだ何か隠し玉があるということなのか。おそらく、そうだ。たとえば、Gmailとの連携は絶対に企画しているだろう(具体的にどういう連携をするのかはわからないが)。今後、EvernoteはGoogleとの連携をますます密にしていくのだと予想する。
Appleはどうする?
より気になるのは、MacとiPhone(iPad)版のEvernoteはどうなるのか、という点だ。GoogleとのコラボなのでAndroidとChromeが優先されるのは当然だが、Mac版とiPhone版にはいつ適用されるのか、気になる人は多いだろう。
しかし、僕の予想では、その時期は割りと遅いではないかと思っている。おそらく、もうEvernote内ではMacとiPhoneの優先順位は高くないはずだ。今後はまずChromeとAndroidを優先的にアップデートし、Apple製品はそれから、という流れが続くだろう。
そう思う理由は、Apple純正のメモアプリにある。これまでEvernoteの開発はMacとiPhoneが優先されてきたが、そこへきて、(なぜか)Appleはメモアプリをアップデートし、Evernoteからの取り込み機能を実装した。Evernoteの領域に侵入してきたのだ。これはEvernote側からしてみれば、Appleによる裏切りにも思えただろう。
わざわざケンカを売ってきたAppleに対し、Evernoteがこれまでと同様に開発を優先するとは思いがたい。今回、Googleと手を組んだ理由もそこにある、と僕は想像している。