
ツンドラモンスーン The cream of the notes 4 (講談社文庫)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/12/15
- メディア: 文庫
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森博嗣の『ツンドラモンスーン』を読んだので、簡単にレビューを書いておく。
本書は、『つぶやきのクリーム』『つぼやきのテリーヌ』『つぼねのカトリーヌ』に続く、森博嗣のエッセイシリーズ第4弾である。シリーズを重ねるごとにタイトルが「つぶやき」の原型を留めなくなっていったが……そうか、ついに「ツンドラモンスーン」になってしまったか、という感じだ。不思議なタイトルである。
このシリーズを知らない人に向けて簡単に内容を説明しておくと、森博嗣が思いついた100個のテーマごとに、文庫で2ページほどの文量で考えを書いていった、というもの。テーマの種類にはまとまりがなく、社会問題についてだったり、言葉の表記についてだったり、安全保障についてだったり、若者への啓蒙だったりと、バラエティに富んでいる。こういうふうに書くと「説教本か」と思われるかもしれないが、まったくそうではない。あくまで著者が、「こういった問題について、私はこのように考えた」というだけのものだ。しかし、森博嗣は、常人が書かないようなことをズバリと書く人なので、初見の人だとその独特な考えの数々に面食らうかもしれない。
目次から各テーマのタイトルを少し抜粋してみると、このようなものがある。
- 「いいね」「いやだな」は自分の中で留めておいた方が良い。
- 「老後が心配だ」と口にする人に「どうせ死ぬんですから」と言える?(ちなみに、本文は「僕は言える」と続く)
- アマチュアほど、制作の途中経過を実況する。
- おはぎとぼたもちは同じものではないのか。
- 「相手を理解する必要がある」はいつも正しいわけではない。
- ものを捨てて整理しろという洗脳を都会人は受けている。
- 自殺者が多いのは、いけないことだろうか。
- 「ただなんとなく」の大切さ。
- 「やる気が大事だ」と言うが、やる気が何を産み出すのか?
- エッセィを書く理由は、自分が小説を読まないからである。(ちなみに、著者は小説家である)
- 好かれようとすることが、怪しさを増す。
- 「啓発を求めているわけではないけれど」と言い訳する人が多い。
- 全力を出し切るよりも、常に余力を残す方が安心安全。
これらを見ただけでも、著者が独特な思考をしていることが一目瞭然だろう。上は適当に抜粋したものだが、ほかにも面白いテーマが盛りだくさんである。
読みながら、僕は「これは違うなあ」「これはその通りだ」「うーん……」など、いろいろ考えている。著者もあえて極端に書いているようなところがあるのだが、極端であるがゆえに、「本当にそうか?」と考えてしまうのだ。こうした自分が普段は思わないような意見に触れることで、自分の思考を見直すきっかけになる。そういう効果がある本だ。
ところで、本書のタイトルである「ツンドラモンスーン」についてだが、まえがきにこのようなことが書かれていた。
何万人もの人がこの本を読んでくれる。そうなると、幾らかの人は、なにかを得るらしい。そういう噂が地球の裏側まで届くのだ。たぶん、偏西風(ジェット気流とも呼ばれる)だろう。そんなイメージで、「ツンドラモンスーン」にした。
そんなイメージで「ツンドラモンスーン」……うむ、さっぱりわからない。考えたら負けかもしれない。

ツンドラモンスーン The cream of the notes 4 (講談社文庫)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/12/15
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