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姫呂ノート

散文的な個人ブログ

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【書評】『ミザリー』(スティーヴン・キング)

読書

ミザリー (文春文庫)

この前、AmazonのKindleストアでセールが行われて、いろいろな本が半額で買えた。それで、いい機会だから何か小説を買おうと思い探してみると、スティーヴン・キングの小説が何作かセールの対象になっていた。そのなかで、まだ読んだことがない『ミザリー』と『シャイニング』を購入し、つい先日、ようやく『ミザリー』を読み終えた。

キングの小説は何度も映画化されていることもあって、有名なものが多い。この『ミザリー』も例外ではない。僕も以前からあらすじは知っていた。事故によって足を負傷した売れっ子小説家のポールが、自称「あなたの一番のファン」によって監禁されるというものだ。

ポールを監禁したのはアニーという中年の大女で、彼は「冒険小説の石像のよう」という形容をしている。アニーは、車の事故を起こしたポールを偶然発見し、意識がない彼を引っ張って自宅に拉致する。そして、ポールの足が動かないことをいいことに、彼を支配して、自分が望む小説を書かせようというのだ。

タイトルの『ミザリー』とは、作中でポールが創作した小説のシリーズ名である。「ミザリー」という名前の女性が主役のラブロマンス作品で、ポールは、このミザリーシリーズの大ヒットによってベストセラー作家になった。しかし、彼自身はこのシリーズに嫌気が差している。そこで、彼は、最新作でミザリーを殺して、シリーズを終わらせたつもりだった。

ところが、ミザリーの死を知ったアニーは激昂し、ポールにミザリーを生き返らせるよう要求する。自分の意に反して『ミザリーの生還』を書くことになったポールだが、アニーは、少しでも気に入らないところがあれば、容赦なく彼を虐待する。その内容はここでは書かない。ポールが受ける虐待の数々こそが本作の一番面白いところなので、実際に読んで確認してほしい。

本作は、「熱狂的なファン」による恐怖を描いている。リアルの人間ではなく、架空のキャラクターを狂信的に愛している1人の女の狂気だ。ポールは、何も悪いことはしていないのに、アニーが『ミザリー』のファンになってしまったという理由で、この女の狂気をその身で味わうことになってしまうのである。

訳者のあとがきで、ジョン・レノンがファンに撃ち殺されたエピソードが紹介されている。アニーは架空のキャラクターだが、アニーのような人間は実在する。この作品は、現実的に存在する恐怖を描いている。

作中で、アニーは子供時代から狂気を宿していたらしいことがわかる。現実の世界でも、狂人はある日ぽっと出現する。それを止める術はない。そして、運悪く狂人に捕まってしまう可能性は誰にでもある。狂人に捕まらないためにはどうすればいいのか。残念ながら、完全な対策はない。せいぜい狂人に出会わないよう、祈るだけだ。

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