驚愕の解に悪寒が走る〜『ψの悲劇』感想

ψの悲劇 The Tragedy of ψ (講談社ノベルス)

ψの悲劇 The Tragedy of ψ (講談社ノベルス)

森博嗣のGシリーズ最新作、『ψの悲劇』を読んだ。ψはギリシャ文字のYで「プサイ」と読むそうだ。先が気になるあまり、1日で読み切ってしまった。

前作『χの悲劇』(カイの悲劇)が、エラリー・クイーンの『Xの悲劇』オマージュになっていたように、本作も『Yの悲劇』のオマージュになっているらしい。残念ながら、僕は『Yの悲劇』を読んだことがないので、どの程度オマージュされているかはわからない。

八田洋久(はった ひろひさ)という元大学教授が失踪し、その1年後に彼の関係者が八田家に集まるのだが、そこで殺人事件が起こる、というあらすじ。ミステリーのテンプレートそのもので、実際、前半部分を読んでいるときは「クラシックだなぁ……」と牧歌的な気分を味わっていた。

ところが、後半からSF要素が入ってきて、そこでようやく、本作の時代設定が現代よりも未来であることがわかる。その中で殺人事件の真相が明かされると同時に、物語は主人公の自己探求へとスライドしていく。この辺の詳細を書くとさすがにネタバレがすぎるのでやめておくが、哲学的、あるいは人生観的な感動があって、さわやかな風が吹いていた。しかし、最後の最後で驚愕の真実が明かされ、八田洋久という人物の底知れぬ怖ろしさに寒気がした。

Gシリーズは前作からクライマックスに突入しており、今作も前作と同様、爆発的に面白かった。とはいえ、不満もある。不満というより、気になる部分か。これまでGシリーズのメインキャラクターだった山吹早月、加部谷恵美、海月及介の3人。そのうち、前作『χの悲劇』では、海月及介のその後が判明した。なので本作では、加部谷か山吹、どちらかのその後がわかるのではないかと期待したが、その期待は見事に外れた。これまでのシリーズキャラクターで続投しているのは島田文子くらいなもので、あとは全員、新キャラクターだった。うーむ……。Gシリーズは次回作がラストとのことなので、そこで山吹と加部谷の登場に期待したい。

一方で、森博嗣の他シリーズのとのつながりは明確になってきた。百年シリーズとWシリーズには「ウォーカロン」と呼ばれるアンドロイドが登場するわけだが、今作を読めば、そのウォーカロンの完成まであと一歩に迫っていることが窺える。また、前作で語られた「ミナス・ポリス計画」というのは、百年シリーズの「ルナティック・シティ」のことだろう。こうやってだんだんとつながりが明らかになっていく過程は、パズルのピースがはまっていくような快感がある。

Gシリーズは、次作の『ωの悲劇』(オメガの悲劇)が最終作だという。はたして、『ωの悲劇』ではどのようなピースがはまるのか。今から楽しみだ。