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姫呂ノート

散文的な個人ブログ

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記憶障害と人間の弱さ〜映画『メメント』

映画

クリストファー・ノーラン監督の『メメント』を鑑賞した。

たった10分しか記憶を維持できない男による、亡き妻の復讐劇……と見せかけて、その実、人間心理の問題を扱っている意欲作。ストーリーを終わりから始まりまで、時系列を遡って描くという手法を用いていることが特徴。

Wikipediaによると、インディペンデント・スピリット賞で作品賞と監督賞を受賞し、さらにアカデミー賞でオリジナル脚本賞と編集賞にノミネート、ゴールデングローブ賞では最優秀脚本賞にノミネートされたらしい。

以下、物語の結末には触れずに感想を。

物語は、主人公のレナードがテディという男を射殺したシーンから始まる。

レナードは元保険の調査員。数年前まで妻と一緒に幸せに暮らしていたのだが、ある日、自宅に侵入した覆面の男に妻を強姦されたうえに殺害。自身も頭に傷を負ったことで記憶障害に陥ってしまった。自分の人生をめちゃくちゃにした男に復讐するため、レナードは犯人探しをしている。

テディは、そんなレナードにいろいろな情報を提供している男。ただし、10分間しか記憶を維持できないレナードはテディのこともすぐに忘れてしまうため、彼の素性はよくわからない。

レナードが冒頭でテディを殺したため、視聴者は、「テディが犯人だったのか?」と思いながら見ることになる。その答えは、映画のラスト、時系列的には一番最初のほうまで遡ったところで明らかになる。

この映画でまず感じるのは、記憶障害の恐ろしさだ。レナードは、犯人に頭を殴られて以降、新しい記憶は10分で忘れてしまうという体質になってしまった。そのため、覚えておくべきことを細かに写真とメモで記録し、最重要なことは絶対に忘れないように刺青で文字を刻むのだが、それでも危険は常につきまとう。

たとえば、映画の途中で、レナードはドッドという男と対決することになるのだが、彼は街中を走っている最中にドッドのことを忘れてしまう。相手が拳銃を発砲してきている状況で忘れてしまうのだから、想像しただけでぞっとする。

また、映画が進むに連れ、レナードの復讐を手助けしていると思われた人たちが、実は彼を利用していただけだと判明するのだが、自分が騙されていることに気づけないというのも恐ろしい。

しかし、この映画で描かれている本当の恐ろしさは、人間の弱さだ。本作はラストのネタばらしが面白いタイプなので、その結末はここでは明かさないが、レナード自身に隠された真実、そして彼自身が選択したことの意味を考えると、人間を地獄に導くのは、その人自身の弱さなのだと思わずにはいられない。

それにしても、クリストファー・ノーラン監督といえば『ダークナイト』三部作が現在では有名だが、彼の真骨頂はこうしたサスペンスにあるのだなぁ……と感じた。『ダークナイト』を見たときも思ったが、ノーラン監督はあまりアクションが得意ではないようだ。静かな作品のほうが、よりセンスを発揮できる気がする。本作でいえば、ポラロイド写真を何度も振るファースト・シーンで既に引きこまれた。