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姫呂ノート

散文的な個人ブログ

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書評『森田療法』(岩井寛)

読書

身体をガンに侵された著者が、手も動かせない状態で口述筆記によって書いたという、渾身の1冊。

心理療法の1つ、森田療法を紹介したものだが、その内容は神経質者だけでなく、普通の人にとっても有用なものになっている。

森田療法の特徴は、「あるがまま」を受け入れることだ。西欧の療法が不安や葛藤を除去する方向性であるのに対し、森田療法では、不安や葛藤を「あるがまま」として受け入れ、そのなかで自己実現を目指す。

たとえば、就活の面接で緊張してしまう。これは当たり前のことであって、緊張をなくそうとしてもできることではない。就活生は皆、緊張しつつも面接に望んでいるのだ。

ところが、神経症──特に不安障害の人は、普通の人ならさして緊張しない場面でも緊張してしまう。このために「自分の不安は異常なのだ」と、不安を除去しようと努めるわけだが、そのように意識することで、かえって不安が強まってしまう。

そこで森田療法では、神経質者に対して「あなたの不安を受け入れよう」と諭す。普通の人とは異なる状況で不安になっても、それは除去できないものなのだから、受け入れて行動しよう、と。

神経症の最大の問題は、不安のために自分が本当にやりたいことができなくなってしまう点にある。不安を除去しようとして、やるべきことから逃避してしまうのだ。しかし、不安を「あるがまま」として認め、苦しみながらも行動していけば、やりたいことが達成できる。

こうしてみると、森田療法は療法というより、生き方の指南であることがわかる。人間はいかに生きるべきか、どうすれば幸せになれるのか、そうした問いに心理療法の観点から答えたのが森田療法なのだ。

本書の最後には、ガンに侵された著者による、自分の生と死を見つめるエッセイが収録されている。そこには、森田療法を実践してきた者のありのままが描かれている。苦しみながらも自由を求めるその生き様は、多くの人の励みになることだろう。