今月になってNetflixが新しい番組を配信した。『チェルシー』というトークショーだ。最初は興味がなかったのだが、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が取り上げられた回があって、それに釣られて番組を見てみた。
結果、どうなったか。「その回だけ見ればいいや」と思っていた僕は、すっかり配信中のすべてのエピソードを網羅し、次回の更新が楽しみでしかたなくなった。『チェルシー』は笑えるし、歯に衣着せぬ物言いが爽快で面白い。ホストのチェルシー・ハンドラーの生き方にも学ぶべきところがある。
『チェルシー』の概要
全米で大人気の有名コメディアン、チェルシー・ハンドラーのトークショー。最新のトレンドや社会問題について、毎回異なるゲストを交えながらチェルシーが語っていく。番組はNetflix配信で、週3回ずつ新エピソードが更新される。
チェルシー・ハンドラーについて
日本では知られていないが、アメリカでは超有名で、タイム誌の「世界で最も影響力がある100人」に選ばれたこともあるほど。
コメディアンとしての彼女のスタイルは「自分に正直であること」。黒人大好き、子供なんていらない、(ドナルド・トランプは)差別主義者のバカ等々、とにかく自重しない。その正直さと笑いのセンスが高い人気の秘密だ。
言いたい放題の『チェルシー』
チェルシー・ハンドラーの面白さがそのまま番組の面白さにつながっている。他の放映局なら自主規制が入りそうなところも、Netflixなので思いっきりぶちまけている。
その本領が特に発揮されたのが「ワンダ・サイクスと米大統領選2016」の回だろう。現在進行中の大統領選挙戦を取り扱ったこの回は、普通なら「トランプ支持者のゲストも交えて議論しよう」となるところをまったくせずに、ゲストと一貫して「トランプはクソ」という話に終始し、最後には自分の背中に「トランプはケツの穴野郎」と大きく書かれた写真を公開して締めた。完全にブレーキがぶっ壊れている。
※上述の写真のスクショを貼ろうかと思ったが、Googleアドセンス・はてなブログの両方の規約に引っかかりそうだったのでやめておいた。
番組内で日本の原宿が取り上げられたこともある。その模様の一部を公式が動画配信している。
「原宿スタイル」を学ぼうとする41歳。動画は途中で終わっているが、この後、原宿を経験した彼女がこうコメントする。
「いまいち原宿がわからない。スタイルなのか街なのか、生き方なのか。みんなが個性を持とうとしているように見える。それはいいことよ。でも原宿を説明することはできない。話題にしても結論は避ける。よくわからないから」
「性格が大胆だから服は地味にする。服でクールさや落ち着きを表現する。だって私の頭のなかや『ここ』(心)は──『原宿』だから」
※コスプレした41歳の絵面を見ながら上記のコメントを聞くと非常に面白いので、ぜひ本編を見てほしい。
自分らしくあるために
チェルシーは原宿スタイルの撮影のために来日したが、その際にインタビューを受けたようだ。インタビューはネット上で記事になっている。この記事を読めば、彼女の考え方や仕事に対するスタンスがより理解できるだろう。
個人的に興味深かったのが、以下の部分。
―あなたのことを考えると、「unapologetic(弁解しない、無駄に謝らない)」という言葉が一番最初に浮かぶんだけど、努力してこうなったの? それとも自然に?
もともとこうだった。ただ有名になればなるほど、自分の発言を批判する人が増えていって、「言い過ぎかな」「これは挑発的すぎるかな」と考えちゃう時はある。有名になる前は本当になにも考えずに、思ったことをそのまま発言してたんだけど。
今は本当の自分でいることを大切にして、周りの意見を気にしないようにしてる。特にコメディアンなら、自分の意見はしっかり持っていないといけないでしょ。自分の意見はシンプルに保つこと、そしてネットのコメントは見ないこと。自分のファンが10人いれば、自分を嫌いな人も10人いるから。自分が大切にしている人の意見を聞くことは大事だと思うけどね。
―ツイッターやインスタグラムで大量にコメントが来ると思うけど、読んでないの?
たまにね。でも普段は読まない。意地悪なコメントを見ちゃったらそこで閉じるし、時にはいいコメントを読むと嬉しくはなるけど。基本的に私は謝らないの。謝罪が要求されるほど重大なポジションについてるわけじゃない、と自分では思ってるから。
ここからわかるのは、チェルシーは鋼鉄の精神の持ち主などではなく、普通の人間と同じように傷つく心を持っているということだ。しかし、彼女はそんな自分の弱さをわかっていて、「自分らしくあるために、あえて他人の意見は見ないようにしている」。それがチェルシーの正直さにつながっているのだ。
インターネットの進化によって、現代では他人の意見を簡単に目にできるようになってしまった。しかもネットは双方向であり、自分が他人に意見することができると同時に、他人からも自分に意見をすることができる。そういう場に浸っていると、知らず知らずのうちに他人の目を気にするようになってしまう。
自分らしく、正直であるための方法。それをチェルシーは体現しているのだ。