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姫呂ノート

散文的な個人ブログ

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映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ストーリーの要点

アメコミ

アート・オブ・シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(MARVEL)

アート・オブ・シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(MARVEL)

今月の1日に映画館で『シビル・ウォー』を鑑賞し、その後に風邪を引いて苦しみつつも、あれこれ考えてようやくストーリーの要点がまとまったきたので、ブログに書いておく。

まず、事前の情報から僕が予想していたことが2つあった。

  1. 超人を国連の管理下に置く「ソコヴィア協定」がテーマになること
  2. 「キャプテン・アメリカ」の映画である以上、それと対立するアイアンマン側は株を下げられるだろうこと

このうち、前者は外れて、後者はものの見事に当たった。

※ここから先はまだ公開中の映画のネタバレを含むため注意

この映画のテーマ

作中に登場する「ソコヴィア協定」はアベンジャーズを国連の管理下に置くという内容で、これの是非がストーリーのメインテーマになると思っていた。

ところが、蓋を開けてみたら、映画のストーリーは「ソコヴィア協定」に対し、明確に否定的な描かれ方をしていた。その象徴がウィンター・ソルジャーことバッキーだ。映画の冒頭で描かれたのは、ヒドラに洗脳され、彼自身の意思とは無関係に暗殺をやらされるバッキーの姿。この時点で、映画は既に「超人を管理するという思想が行き着く先はウィンター・ソルジャーである」と、協定を暗に否定している。つまり、この映画の本当のテーマはソコヴィア協定の是非とは別のところにあるわけだ。

では、『シビル・ウォー』の本当のテーマはなんだったのか。それがわかるのが、終盤でスターク夫妻の死の真相が明かされるシーンだ。交通事故で死んだことになっていたトニー・スタークの両親だったが、その事故は、実はウィンター・ソルジャーによる暗殺だったのである。それを知ったトニーは我を忘れて激怒し、バッキーを抹殺せんと攻撃を仕掛ける。そこにはもはや正義という建前はなく、純然たる復讐心だけが彼を動かしていた。一方、そこで同時に明かされるのが、スティーブが交通事故の真相を知りながら黙っていたということだ。もしトニーが真相を知ればどういう行動に出るか、彼にはわかっていたのである。

このシーンからわかるのは、それまで公共の正義を理由に動いていたように思えたトニー・スタークが、実はエゴで動いたということであり、また同時に、それまでエゴで動いていたように見えたスティーブ・ロジャーズが、実は大局的見地から行動していたということである。このシーンは、キャプテン・アメリカとアイアンマンが戦う理由を作ること以上に、2人の男の根底にあるものを描いているのだ。

そう理解してみると、いろいろ腑に落ちることがある。

実は冷静だったスティーブ

映画のストーリーはキャップの視点で進むので、彼のことを誤解する人は少ないだろうが、一応説明しておく。

そもそもスティーブがソコヴィア協定に反対したのは、前作でS.H.I.E.L.D.がヒドラに乗っ取られていたという経験を踏まえて、「すべての責任は自分を含むアベンジャーズのメンバーそれぞれで持つべきだ」と考えたからである。確かに世間はアベンジャーズを恐れているし、自分たちも失敗を重ねたが、それでもアベンジャーズの能力と責任を「大勢の意思決定プロセス」に預けてしまえば、また別の過ちが起きる。

事実、このスティーブの想像は当たっていた。テロが発生し、その容疑者がバッキーであると報道されるやいなや、政府は即時に射殺命令を出した。このとき、本当にバッキーが真犯人なのかどうかを確認しようとしたのはスティーブだけだった。ここは一見すると「親友を助けようとするエゴ」に見えかねないが、彼はまずバッキーに話を聞き、そして特殊部隊の人間を殺さないように戦うバッキーの姿を見て、「バッキーは真犯人ではない」と確信したのである。もしあそこでスティーブが介入しなければ、バッキーは特殊部隊か、もしくはブラックパンサーのどちらかに冤罪で殺されていた。

その後、テロの真犯人がジモだとわかってからは、信頼できる仲間を集めてジモの計画を阻止すべく立ち向かう。空港ではアイアンマンチームと戦うことになってしまったが、このときもスティーブはまず最初に話し合いを求めたことを忘れてはいけないだろう。

無論、バッキーの件に関しては私情がまったくなかったとは言えないが、それでも全体を通して冷静に事件に対処していた。そのようにできたのは、スティーブの根底に大局的見地があったからなのである。

リクルートから見られるトニーのエゴ

トニーの根底にエゴがあったことは、ナターシャの「あなたこそ1秒でもエゴを抑えていられないの?」というセリフからも明らかだが、作中の終盤以外でもそれを象徴するシーンがある。

それは、スパイダーマンことピーター・パーカーをチームに勧誘するシーンである。このシーンはギャグ調で描かれているので見過ごしがちだが、よくよく考えるとトニーのエゴが表れていたシーンだった。

わかりやすく説明するために、同じ頃にキャップがアントマンことスコット・ラングを勧誘するシーンを見ていこう。ピーターがトニーに会って興奮したように、スコットもキャップを前にしてはしゃぎ出す。そんなスコットにキャップは、「説明は聞いてるか?」と、彼が状況を把握していることを確認したうえで「僕らは無法者になるぞ、それでもいいか?」と聞いている。スコット自身の意思を尊重しているのだ。

一方、トニーはいきなりピーターの家にあがり込んで、巷で噂になっているスパイダーマンの正体がピーターであると本人に白状させると、「宿題があるんだけど……」という彼を無理やり引っ張っていく。いくら超人であるとはいえ、まだ未成年のピーターをアベンジャーズの内紛に強引に参加させたのである(というか、空港におけるローズとの会話から、ピーターの年齢すらちゃんと把握していなかった節がある)。

これら2つのリクルートシーンからも、他人の意思を尊重するキャップと、自分のエゴを優先させるトニーという違いがはっきり表れているのだ。

散々だったアイアンマンチーム

キャップチームとアイアンマンチーム。対照的な2人のリーダーにより結成されたそれぞれのチームだが、空港でのバトルを経て、その明暗ははっきり分かれた。

キャップチームが抜群のコンビネーションでスティーブとバッキーの両名を送り出したのに対し、アイアンマンチームは土壇場でナターシャがキャップ側に付き、さらにローズがフレンドリー・ファイアで重体になるという惨憺たる結果に終わった。

なお、このヴィジョンがウォーマシンを撃墜してしまったシーンだが、これはトニーが、ワンダを軟禁しておくようヴィジョンに命令し、そのことによって彼が精神に不調をきたしてしまったことが遠因である。つまり、ローズがああなってしまったのは、大元をたどればトニーに責任があるのだ。

まとめ

映画『シビル・ウォー』の本当のテーマは「超人を管理することの是非」ではなく、「エゴが生み出す悲劇」である。今作のストーリーで、同じく新顔であるスパイダーマンよりもブラックパンサーのほうが活躍しているのはそのためだ。父の仇をつけ狙うティ・チャラは、まさにこのテーマを背負った存在なのである。

当初は復讐心のままにバッキーを殺そうとしていたティ・チャラだが、真相を知り、復讐心を肥大化させて無関係な人間を大勢殺したジモを見たことで、自身のエゴを抑えることを決断する。そしてジモを殺さずに捕らえた彼は、正義のためとはいえ法を犯してしまったスティーブたちを自国ワカンダで匿うことにする。それはバッキーに対する償いの意味もあったろうし、「いずれまたアベンジャーズが必要なときがくる」という王としての判断があったからなのかもしれない。ひとつだけ言えるのは、この映画はキャプテン・アメリカの物語であると同時に、ブラックパンサーが王としての自覚を持つための物語であったということだ。

また、今作は『アベンジャーズ』以降のトニー・スタークの問題点をあぶり出すための物語でもある。ニューヨークで異星人との戦いを経験してから、恐怖に取り憑かれた彼はどこかおかしくなってしまった。『アイアンマン3』ではスーツを乱造し、『エイジ・オブ・ウルトロン』ではウルトロンという脅威を生み出してしまった。そして今回はアベンジャーズを守ろうと協定に賛成したところ、結果的にチームは分裂という最悪の結果になった。いったい、なぜトニーは失敗を繰り返すのか。その理由は、彼が己のエゴを抑えられないことにある。それを暴いたのが、今作の物語なのだ。

終盤のキャップ対アイアンマンで、マスクを剥がされたトニーは、シールドを振りかぶるキャップに対し、思わず首をガードしてしまう。あの瞬間、彼はスティーブに殺されると思ったのだ。これは「友人だと思っていた男でさえ、いざというときには信じられない」という彼の弱点の表れである。そして、そんな自分を自覚したからこそ、あそこでトニーは愕然とするのだ。

こうして自分の責任を突きつけられたトニーだったが、ラストでスティーブからの手紙が届き、彼がまだ自分のことを仲間だと思ってくれていること知り、顔をほころばせる。今作で落ちるところまで落ちてしまったトニーだが、自分の欠点を知り、同時に、本当に信頼できる者が誰かを知ったことで、ようやく本来の調子を取り戻していくのだろう。既にアイアンマンは来年のスパイダーマン主演映画に出演が決定しているとのことだが、ここから次回のアベンジャーズ第3作にかけて、アイアンマンの本当の意味での復活劇が描かれるものと予想する。

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