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姫呂ノート

散文的な個人ブログ

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神々の対談との出会い

読書

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE

http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/pdmagazine

昔、僕はある本と出会った。その本をきっかけにある文学者を知り、その人物にのめり込むことになった。深い精神性と洞察力、文章に対する真摯な思い、著作の数々から垣間見せるそれらに、僕の心は否応なく惹きつけられた。

その人物とは、小林秀雄である。小林は文学の世界において「批評の神様」と呼ばれている。数年前にはセンター試験で小林の著作から出題された問題が、非常に難問であったことから多くの受験生を涙させたことで知られている。

センター試験の件から小林秀雄に悪感情を抱いている人もいるだろう。確かに小林の文章は、試験問題として出すにはあまりに難しい。しかし、試験という場を離れて、ひとつの作品として向き合うならば、これほど知性を刺激する文章はめったにない。より深い知性を目の当たりにしたいと思うならば、まさに小林秀雄はうってつけである。

本題に入ろう。僕が小林秀雄を知ったきっかけは、図書館だった。とある休日、僕はふらりと立ち寄った図書館で、これまたふらりと数学の雑誌を手にとった。言っておくが、僕は数学の世界には詳しくない。学校の勉強でも、どちらかといえば苦手な分野だった。そのとき数学の雑誌を手にしたのは、「数学の雑誌ってどんなことが書いてあるんだろう?」という単純な興味だった。

門外漢だったから、もちろんそこに書かれている数式の意味などはまったくわからなかった。ただ「これを考えた人はもの凄く頭がいいんだろうなあ」とのんきに読んでいた。そのとき、ふとコラムの部分が目に入った。そのコラムの内容は、今ではもう忘れてしまったが、とにかく、そのコラムで『人間の建設』という本について触れられていたのが印象に残った。

『人間の建設』とは、対談をまとめた本だ。批評の神様である小林秀雄と、天才数学者である岡潔の2名による、まさに「神々の対談」とでもいうべき内容だ。

といっても、当時の僕は無知だったので、小林秀雄、岡潔ともに名前すら知らなかった。そこでも、数学の雑誌を手にとったときのような、「『人間の建設』ってタイトル凄いな。どんなことが書いてあるんだろう」という素朴な興味で本を読んでみたのである。

しかしそこには、人間が持ちえる最高峰の知性を獲得したもの同士による、極限の対談が行われていた。読み終える頃には、僕はすっかり彼らの知性に魅了されていた。

小林秀雄も岡潔もまちがいなく天才である。ただ、僕は前述のように数学は門外漢だったので、どちらかといえば小林のほうに惹きつけられた。そして、これ以降は小林の他の著作にも手を出していくのだが、そこから先のことは本筋ではないので割愛する。

ひとつはっきりしているのは、あのとき僕が何気なく数学の雑誌を手にとらなかったら、この素晴らしい対談には出会えなかった、ということだ。自分が興味ない分野にも手を出してみることがいかに重要か、身を持って思い知ったのである。

人間の建設

人間の建設

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