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姫呂ノート

散文的な個人ブログ

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映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』レビュー

映画

「恐ろしいことを目にして、僕も恐ろしいことをした。それを話したら……僕が悲しくなる。あなたも悲しくなる。これからの人生、ただ幸せになりたいんだ。もし僕が話せば、あなたは思うだろう。僕はビースト(けだもの)か悪魔だと……。どちらも僕だろう。でも、僕にも母さんがいた。父さんも。兄さんと妹も。みんな、愛してくれた」


Netflixのオリジナル映画、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』を見た。配信自体は昨年の10月で、その頃から気になっていたのだけれど、予告編を見て「これは生半可な気持ちでは見られないな」と感じ、ようやく最近になって鑑賞の覚悟ができた。

この映画は、少年兵がテーマの映画だ。

物語の舞台は、西アフリカのとある国。その国で内戦が勃発し、平凡な少年だったアグーは、戦火のなかで少年兵に変貌していく。

少年兵になるアグー

アグーは中立地帯の村に家族と一緒に住んでいたが、ある日、内戦が激化して村も危なくなった。そこでアグーの父親は、妻と子供たちを疎開させようとしたのだが、車に乗れる人数が限られていたせいで、アグーと兄は残されることになった。その後、村に政府軍が侵攻してきて、アグーはなんとか逃げ出せたのだが、父親と兄、祖父は殺されてしまった。

緑が生い茂るなかをあてもなくさまよっていたアグーは、政府軍に対抗している武装勢力のひとつに拾われ、少年兵として育てられることになる。

訓練を終えて兵士になったアグーは、戦場で人を殺していくのだが、もとから信心深かったアグーは、罪を犯していくたびに精神がやられていく。

この映画は、少年兵がどのように生きているのかを描いている、リアル志向の映画だ。

部隊の「指揮官」

アグーの部隊を率いている「指揮官」という、ゴリラのような大男がいるのだが、これがまた悪い男で、「私はお前らの父親だ」という割に、部下のことをまったく大切にしない。それどころか、邪魔になったら殺しさえする。

ある日、最高司令官の命令で、指揮官が転属することになったのだけれど、それを嫌った指揮官は、自分の跡を引き継ぐはずだった副官を暗殺して、そのまま部隊に居座り続ける。この男は、戦争のなかで功績を上げ、将官になることしか頭にないのだ。

当然、この指揮官にはあわれな最後が待ち受けている。指揮官は、無謀にも部隊を進軍させたすえに、食料と弾薬が尽きてどうにもならなくなり、最後には部下全員から見捨てられる。死亡したシーンは描かれなかったが、「水を確保するために部隊全員で土を掘っている」という状況で見捨てられたので、まず生きてはいないだろう。

少年兵ストライカ

部隊には、アグー以外にも少年兵がいた。そのなかに、言葉がしゃべれない少年がいて、仲間からは「ストライカ」と呼ばれている。このストライカが、部隊内でアグーの親友的な立場になっていく。仲良く遊んだり、ある夜にアグーが指揮官に犯されたときは、ストライカが慰めてあげたりした。

しかし、そんなストライカも、戦場のなかで死んでしまう。戦場で銃弾を受け、ストライカは動けなくなる。アグーはストライカを背負って、最後まで一緒にいたのだけれど、結局ストライカは力尽きてしまった。

戦場から離れても戦争を忘れられない

ストライカだけではない。戦場では、部隊仲間が毎日のように次々と死んでいく。そういう事情もあったから、最後には指揮官を見捨てて国連の平和維持軍に投降したのだけれど、戦場を離れて平和な暮らしを手にできても、アグーはそれに馴染むことができない。ノートに死体の絵ばかり描いているのだ。

戦争を忘れられないのは、アグーだけではない。投降した仲間のなかにも、やっぱり自分は兵士としか生きられないと思って、戦場に戻っていくものがいた。

この物語には、救済は描かれない。ただ、最後にアグーがみんなと一緒に海で遊んでいるシーンを映して、ひょっとしたら平和な日常に慣れていくかもしれない、という希望を残して終わる。

全編に残酷さともの悲しさが漂っている映画で、けっしてエンターテイメントではないのだけれど、鑑賞者の心に迫るものがある。とても良い映画だった。

『ビースト・オブ・ノー・ネーション』予告編


ビースト・オブ・ノー・ネーション予告編 - A Netflix Original Film [HD]