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姫呂ノート

散文的な個人ブログ

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『発達障害のいま』を読む

読書

発達障害のいま (講談社現代新書)

発達障害のいま (講談社現代新書)

『発達障害のいま』という本を読んだ。発達障害についてある程度の知識をもっていることが前提だが、なかなか興味深い内容だった。

著者の杉山登志郎さんは精神科医で、臨床の経験を踏まえた、最新(2011年時点)の発達障害事情について書かれている。

杉山 登志郎は、日本の医学者、精神科医。医学博士。浜松医科大学児童青年期精神医学講座特任教授兼あいち小児保健医療総合センター心療科非常勤医師。静岡市生まれ。 日本における高機能自閉症やアスペルガー症候群の権威の一人。最近では子ども虐待にも関心を持つ。久留米大学医学部卒業。 Wikipediaより

本のテーマは大きく分けてふたつ。「発達凸凹という考え方」と、「トラウマと発達障害の関連性について」である。このふたつについて、著者が実際に臨床を行ったケースを紹介しつつ論じている。

序章で、まずヒナコ(仮名)という、自閉症スペクトラム障害の子供のケースについて紹介したあと、著者はテーマとなる部分についてこうまとめている。

  • 自閉症スペクトラム障害と診断された子供の親に、非情に質的に似たところがある人がしばしば見られること。時にはお父さんもお母さんもそうであること。
  • しかし、これまでふたりともそのことを指摘されたことはなく、このような問題が生じるまで本人自身、何も気づかなかったこと。さらに誰からも指摘されなかったこと。
  • お父さんも、お母さんも、社会的な苦手さをはじめとして、ヒナコとよく似た部分はたくさんもっているが、明らかにヒナコのような◯◯障害といった診断基準を満たすだけのはっきりした所見は、幼児期までさかのぼっても認められないこと。
  • ふたりともうつ病になったこと、しかもお父さんは単なるうつ病とはいえない気分の上下をともなう状態を呈したこと。
  • ふたりとも、これまでの人生のなかで、今日なら子供虐待と判定されてもおかしくない体験を抱えていること。さらに加えていじめなど、トラウマ(心の傷つき)を少なからず抱えていること。
  • ヒナコは自閉症スペクトラム障害という診断だが、抗多動薬が有効どころか著効したこと。

発達凸凹とは何か

発達凸凹とは、認知に高い峰と低い谷の両者をもつ子供と大人である。そして狭義の発達障害とは、発達凸凹に適応障害が加算されたグループである。

たとえば、アスペルガー症候群でいうと、特性を備えるもののうち、日常生活を送れるような軽度のものに関しては「障害」という呼称を用いず、単に「凸凹」と呼んだほうがいいということであろう。

確かに、ひと口に発達障害といっても軽度のものから重度のものまで混在してしまっている状況なので、こうして呼び名を分けることは大切だと思う。

重要なのは、発達凸凹の場合、けっしてマイナスとは限らないということだ。よく、アスペルガー症候群の典型例として作家のルイス・キャロルや、現代ではビル・ゲイツが紹介されたりするが、著者の分類にしたがえば、このふたりは「障害」ではなく「凸凹」となる。

ただし、発達凸凹だからけっして大丈夫というわけではない。マイナス部分が悪化し、適応障害が加算されれば凸凹から障害にまで転じてしまう。「発達凸凹だから一般人と同じに扱えばいいだろう」などと考えてはいけない。こういった子供に対しては、やはり特別な教育を受けさせるべきだ。

われわれ日本人は独創性が低いといわれて久しい。だが実情は、独創性がつぶされてきただけなのではないか。ビル・ゲイツがどれだけの富をアメリカにもたらしたか考えてみるとよい。発達凸凹児への特別支援教育は、わが国において、21世紀を開く突破口になり得るものである。

トラウマと発達障害の関連性

このテーマに関しては、どちらかと言えば実際に臨床にあたっている人向けだと思う。要約すると、「トラウマは発達障害と結びつきやすいので、発達障害だけを診るのではなく、トラウマの有無も調べて対応しなければならない」ということだと理解した。

また、子供が虐待を受けている場合、その親も過去に虐待された経験なり、別のトラウマなりがあることが多いらしい。「自分も親に殴られて育ったのだから、子供を殴るのは当然」という思考に(無意識のうちに)陥ってしまうのだろう。よって、虐待児童を診る場合は、親にも注意しなければならない。

まあ、このあたりは精神科医向けの内容なので、一般人にはあまり役に立たない知識かもしれない。一般人にできることといえば、異常を感じたらとにかく病院に行くことだろう。

ところで、「トラウマの治療には、まず安全な場所のイメージをきちんと作る」と書かれていて、この部分は一般にも大いに活用できるのではないかと思った。トラウマの有無にかかわらず、いつか来る不安に備えて、日頃から「安全な場所」のイメージを作っておく。いささか自己啓発みたいだが、こういうイメージトレーニングは何気に大切だ。

発達障害のいま (講談社現代新書)

発達障害のいま (講談社現代新書)